「ゲート 2 炎龍編」 柳内 たくみ2010年09月14日 01時56分

ゲート 2 炎龍編 表紙
副題を「自衛隊 彼の地にて斯く戦えり」という。
別に私が自衛隊モノが好きという訳じゃないんだけど。

異世界ファンタジー物です。かつ、エルフとか猫耳やらウサギ耳の亜人とか、ゴスロリの亜神(もちろん、いずれも美少女)とかが跋扈する、きわめておたくの妄想的な異世界との出入り口(ゲート)が、銀座の ど真ん中に現れたという設定である。しかも、元がネット小説であるという。 こう書いただけでキワ物感満点であるが、結構おもしろい。
主人公である、おたく自衛官の伊丹と、エルフとか猫耳やらウサギ耳の亜人とかゴスロリの亜神(もちろん、いずれも美少女)とのやりとりを軸に、異世界における自衛隊の活躍?がテンポ良く展開する。 荒唐無稽でいいじゃん、って素直に思える物語性と、妙にリアルな細部の描写でちゃんと読ませる。

ふと、お気楽な読書を楽しみたいときに好適な一冊。
でも、1から読んだ方がいいかも知れないなあ。

(アルファポリス 2010年8月8日発行 1700円+税) アマゾンへのリンク
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「絵はがきにされた少年」 藤原 章生2010年09月15日 02時25分

絵はがきにされた少年表紙
題名からは中身が全く創造できないシリーズ、その2です。
(その1は「妻を帽子と間違った男」ですね(^_^;) )

数年間にわたってアフリカを取材した特派員が、色々な人から聞いた話から感じたことを書き綴ったノンフィクション、である。
全体のテーマを一言で言っちゃうと
・ありふれたイメージで物事を決めつけて見ちゃいけない。
 ってことかな。本当のことは、ひとりひとりの言葉の中にある。相手はウソをついているかも知れないけどね。
筆者はこう言う。声高に貧困解消を叫ぶ前に、まず一人のアフリカ人のことをよく理解しなさい。そうすると人を助けるということが、どれほど自分を傷つけるかが分かるから。そして、そういう経験をした者はもう声高に叫ぶことはしない・・・。
「先進国」からの食料援助についてアフリカの女性は言う。「乏しい収穫を前に、これをどうやって分けて、どうやって食べていこうかと思っているときに、ただの食糧をが来ると、もう働く気がしなくなるのです」

題名のナゾ?については読んでのお楽しみということで(^_^)

(集英社文庫 2010年8月25日発行 600円+税)
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「武士の家計簿」 磯田 道史2010年09月25日 08時55分

歴史研究者が書いた、金沢藩のとある武士の一家の江戸時代から明治にかけての歴史である。
話は、著者が、江戸末期から明治12年までの36年分の猪山家の家計簿や書簡などを入手したことから始まる。
記録を丹念に読み解くことで、武士の一家の暮らしぶりや価値観、変転などが明らかになっていく。
ともかく、事実をコツコツと積み重ねることで全体像を明らかにする過程が素晴らしい。江戸時代の人の暮らしや考え方と言っても、我々と同じ部分もあれば予想外に異なっている部分もある。
例えば、一家の主と、召し抱えられたばかりの子どもが同じ給料だったりする。同一労働同一賃金である。年功序列こそ日本の伝統と思っている私には意外だった。
また、家計の中の義務経費、いわば武士の体面を保つための経費が異常に多い。その裏で、多額の借金をせざるを得ない状況・・・。
やがて明治維新が来て武士たちの家は、それぞれ慣れぬ商売に手を出したり不動産を購入したりしていく。その中で、新政府に仕官できた者は恵まれた生活ができる。
本書は、近々映画化されるという。予想外な気もする反面、当然だろうと云う気もする。本書には、良質の歴史小説を読むような面白さがある。
初版は2003年、このような本の存在を7年間も見逃していたことを、恥じ入るばかりである。熱烈お薦めの一冊である。
(新潮新書 2003年4月10日発行 ※現在41刷! 680円+税)
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