「ウソの歴史博物館」 アレックス・バーザ2010年07月09日 01時30分

読みかけて中断していた本。
私の好きな雑学系だし、内容も歴史上のウソ、ペテン、ホラなので興味はあったはず。何で中断してたかって言うと、表紙が悪い。
有名な、ビルに突っ込む旅客機に気がつかずに撮った記念写真が額縁に入っている表紙。何となく、この手の悪ふざけが一杯載ってるのかと思って読み始めたら、マジメな歴史的記述が続いたので放り出しちゃったんだね。
今回読んでみたら、おもしろかった。
中世におけるホラ話の位置づけから、西洋のホラ話文化?の伝統に話は及ぶ。そういう歴史を踏まえないと、新聞に平気でホラ話を掲載しちゃう神経は理解できない。
元々は著者の運営するブログからできた本なので、一つ一つのエピソードの記述は割とあっさりしてる。それでもツボは押さえてるので楽しめます。
あ、個人的には昔から不思議に思っていた巨大猫を抱いている写真のナゾ解きが読めて、スッキリしました。

(文春文庫 2006年7月10日発行 657円+税)

「妻を帽子とまちがえた男」 オリヴァー・サックス2010年07月03日 14時55分

表題だけではどんな内容の本だかわからない(^_^;)
著者は脳神経科医、というより、映画「レナードの朝」の原作者と言った方が知っている人が多いだろう(私も)。
「レナードの朝」は、30年間昏睡状態にあった患者が、新薬の投与によって意識を取り戻した様を描くノンフィクションであるが、本書も数々の脳損傷者の症例を巧みな筆致で描き出したものである。
眼は見えていても何を見ているか認識できない患者は、帽子を取ろうとして妻の頭を掴んでしまう。数秒間しか記憶を保持できない患者は、話している間に相手が誰か分からなくなってしまい、勝手に「物語」を作ってつじつまを合わせてしまう。
これらの奇妙な症例を読むと、「人間で不思議だなあ」と最初は興味本位で読んでしまう。しかし、読み進めていくうちに、失われたものと残されたもの、あるいは失われた部分があるから見えてくる部分、などにスポットライトが当たってくる。病気の症状で現れる、過去の追憶と郷愁、恍惚感。治療を拒否する患者。
「人間性ってなんだろう?」「人間の価値ってなんだろう?」などとガラにもなく考え込んでしまう。
原著は1985年であるが、すでに古典と言ってよいのではないかと思う。
(ハヤカワ・ノンフィクション文庫 2009年7月10日発行 880円+税)
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