「巨大翼竜は飛べたのか」 佐藤 克文2011年05月06日 00時00分

本書の大部分は翼竜の話ではない。
著者は海で暮らす(海鳥も含む)現生動物の行動学が専門である。
著者は、色々な動物に、温度センサー、加速度センサー、圧力センサー、果てはカメラなどを取り付けてその行動を解析する。例えば加速度センサーを使えば、その生き物が、どのくらいの加速度で移動するかはもちろん、どのくらいの周期で羽ばたくかが分かる。
機器を装着するときに、生き物の重さや大きさを測定すれば、それらと移動パターンとの関係が研究できる。
こう書くと単純そうだが、対象が生き物であるだけに、色々な要素が関係する。ただのんびり泳いでいるのか、餌を探しているのか。動物同士を比較するなら、条件を揃えなくてはならない。
現場で一つ一つ問題を解決して、丁寧にデータを分析して、著者は、動物の体の大きさと、移動速度、羽ばたきの周期の関係に仮説を立てる。その過程は実にスリリングである。
結果的に、最後の最後で翼竜の話になる。巨大翼竜は飛べない、という結論には説得力がある。誤解しないでほしいのは、著者が主張しているのは、現生動物の体重と羽ばたき周波数の関係を翼竜に適用すると巨大翼竜は飛べない可能性が高いという仮説である。
仮説であるから、当然、色々な反証があり得る。我々は、予想外の結論に驚くのではなく、そこに至るまでのデータ集めと論理を味わうべきであろう。
個人的には、巨大翼竜が飛べないとすると、あの翼は何なのだ、とは思う。走りながらバタバタ羽ばたくだけだとすると、相当邪魔であろう。配偶者へのディスプレイに使うのだろうか?あっという間に絶滅しような気がする・・・。

(平凡社新書 2011年1月14日発行 900円+税) アマゾンへのリンク
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