「西巷説百物語」 京極 夏彦2010年08月16日 02時20分

最近、たくさん本を出している京極先生の新刊です。

巷説百物語の系列ですが、こちらは又市ではなく靄船(もやぶね)の林蔵が主人公で舞台は大阪です。

『怪』に掲載された6編に書き下ろしを加えて、計7つの物語が展開されます。最初の2編は、正直、ちょっとどうかなって感じでした。まあ、この辺までは、自己紹介みたいなもんだな、と。
でも、3編目からは一気に京極ワールドに突入です。
一文字屋仁蔵に持ち込まれた依頼を、林蔵をはじめ、祭文語りの文作、お龍、六道屋の柳次など、一癖もふた癖もある登場人物たちが解決していきます。ただ、どれも生半可な解決ではなく、表面に出ていた問題の、奥の奥にある本当の問題にまで手が届いてしまうのです・・・。

今までの、又市が主人公のシリーズより、人間性の恐ろしさが、ひしひしと迫る内容になっている気がします。従前のシリーズは、どちらかというと仕掛け重視だったのに比べ、人間の性(さが)というか身勝手さ、我が身可愛さが表に出てくる恐ろしさがあります。
京極先生のファンであれば当然、京極先生の本は読んだことがないという方(!)にもお勧めのできる1冊です。

(角川書店 2010年7月30日発行 1900円+税)
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