「MM9」 山本 弘2010年07月20日

「エムエムナイン」と読む。
モンスター・マグニチュード・ナインである。
これが何かというと、怪獣の体重による脅威度?を表す指標である。
怪獣の脅威を地震という自然災害のアナロジーで表しているのは、日本における怪獣担当部署が気象庁だからである。
その名も「気象庁特異生物対策部」。略称は「気特対」である。
日本国内で怪獣が出現する度に、気特対の面々が怪獣の特性を分析して方針を決定する。その決定を受けて自衛隊が攻撃をする。役所の意志決定プロセスが妙にリアルである。

本書は、怪獣モノのお約束を守った上で、ちゃんと本格SFの文法を守っている。
つまり、怪獣らしい属性(巨大、とか)を持った生き物を登場させて、その怪獣の存在を現在の科学では否定できないリクツで説明している。
ただ、怪獣と妖怪の違いは体重だけ、って話にはぶっ飛んだけど。

ちなみに、7月7日からTVドラマ化され放送されているらしい。文庫の帯(いわゆる腰巻きですね)に「連続TVドラマ化」と書いてあるが、その下に小さな、薄い文字で「原作とドラマでは内容が異なる場合がございます。」とあるのには笑っちゃいました。

 著者は、妙ちきりんな本を笑って楽しむ、あの「と学会」の会長である。
(創元SF文庫 2010年6月25日 860円+税)

「笑撃! これが小人プロレスだ」 髙部 雨市2010年07月25日

小人プロレスって見たことありますか?
私も、子どもの頃にテレビで見た記憶はあるんですが・・・。そのときは、やっぱり「見せ物」って感じでしか見られなかったなあ。
彼らが、いかに技を磨き、観客を楽しませることに真剣だったか。そんな彼らの試合がなぜTVで放映されなくなったのか。
TVに映らないものは存在しないこの時代において、誰が彼らを抹殺したのか。
差別の糾弾や言葉狩りに対する自主規制。ホンネで言えば、臭いものにフタ。見なかったことにしよう、無かったことにしよう。
その一方、彼らが体を痛めてプロレスができなくなっても、レフェリーや事務仕事として雇い続ける社長、リトル・タイガーの試合は欠かさず見て練習も付けてもらったという長与千種。当たり前に人として尊重する関係がそこにはある。

著者も、一人の生きた人間として「彼ら」を見ていたか、自らに問いながら25年間取材を続けた。そして、日本における小人プロレスは消滅した。レスラーは、皆引退し、何人かは鬼籍に入った。

小人プロレスの試合のDVDが付いてます。リトル・タイガーの試合も見てみたいなあ。
発行から3か月で3刷になってる。なぜか嬉しい。

(現代書館 2009年2月25日発行 2600円+税) アマゾンへのリンク

「塩の街」 有川 浩2010年07月27日

ジャーン 「図書館戦争」の有川浩さんのデビュー作です!

突然宇宙からナゾの物体が降りそそぎ、人々が次々と「塩」になっていく。半ば廃墟と化した街の中で暮らす少女と男・・・。

「自衛隊三部作」の中の陸上自衛隊編です。

電撃小説大賞だったんですね。なるほど、ライト・ノベルですね。
前半の現実感の無さとか、主人公の造形が自衛官というよりアウトローっぽいところとか(ネタバレごめん!)、ラノベっぽさがちりばめられてますね。
でも、著者は本書の3分の1くらいから綿密な書き込みを始めて、この後の著作では、リアリティー溢れるホラ話しに突き進んでいきます。変わらず一貫しているのは純情恋愛路線だっていうこと。
ここまで徹底してれば、純愛原理主義者と呼んでもいいんじゃないか。

やたら性格は悪いが頭は良い入江という人物、海堂尊の「チーム・バチスタの栄光」に出てくるロジカル・モンスター白鳥調査官とキャラかぶってますね。入江さんの方が2年ほど早いんだけどね。

やたら楽しい時間を過ごせて、純愛にも酔える。有川センセ、さすがプロです。

それでさ、これ読んで、J・G・バラードの「結晶世界」と筒井康隆の「佇むひと」を思い出した人、いる?

(2010年1月25日発行 角川文庫 667円+税)

「空の中」 有川 浩2010年07月29日

ジャーン 「図書館戦争」の有川浩さんの2作目です!

日本航空界悲願の国産ビジネスジェット。その試験飛行で高度が2万メートルに達した瞬間・・・。数日後、2機編隊で飛行中の航空自衛隊のF15Jが高度2万メートルに達したとき・・・。その数日後、少年は海岸で奇妙な生き物を拾う・・・。

「自衛隊三部作」の中の航空自衛隊編です。

SFとして読むとね、弱いんです。いろいろと。
でも、そういうこと抜きに、主人公春名さん、かっこいぃ!主人公光稀さん、かっこいぃ!綿密に描き込まれた対策本部でのやりとり。飛行少年としては飛行機が重要な位置を占めているだけで嬉しい(^_^)
そしてやっぱり純愛小説なんですね。大人のツンデレですね。(^^ゞ
でも純愛だけで小説書くのも辛いでしょうし、読むほうも辛い。全体がエンターテイメントとして完成度が高いからこそ純愛部分も引き立つのであって、やっぱり有川先生、プロです。

(2008年6月25日発行 角川文庫 705円+税)

「海の底」 有川 浩2010年07月30日

ジャーン 「図書館戦争」の有川浩さんの3作目です!(しつこい?)

桜祭りで公開中の横須賀基地を、突然巨大ザリガニのような生き物が襲う。海上自衛隊の潜水艦に子供たちと共に閉じ込められる二人の士官。人間を捕食するザリガニ、徒手で食い止める機動隊。

「自衛隊三部作」の中の海上自衛隊編です。

いやぁ、完成度高いわ。着想、キャラ、構成、どれを取っても三部作の最高だとワタクシは思います。
怪物どもには敵わない、と分かっていても身を挺して使命を果たす機動隊。自衛隊に引き継ぐために、市街に被害が広がらないようにして、しかも誰にも意図を気づかれずに派手に潰走して見せなければならない。理解しているのは「死んでこい」と命令する上司、引き継ぐ自衛隊、そして自分たちのみ。
ネット上のやりとりとか、随所に小道具も効いてます。子供たちの人間関係も、しっかり書き込まれてます。
それから、潜水艦に閉じこめられて生理が始まってしまい女の子が困る場面がストーリーの中で重要なんだけど、救出隊からの差し入れについて「中身はメジャーな銘柄の生理用品である。しかも夜用だ。」なんて女性作家にしか書けないよねえ。

純愛度は一番低いかもしれないけど、冒険小説ファン、いや面白い小説を読みたい方々には必読書である、と断言します!

(2009年4月25日発行 角川文庫 705円+税)
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