「銀狼王」 熊谷 達也2010年07月09日 00時27分

明治の北海道を舞台にした、初老の漁師と巨大な狼との戦い。
全体に淡々とした描写がリアルだが、一番生き生きしてるのが猟犬「疾風」。準主人公の銀狼より描き込まれてるよなぁ・・・。
ひょっとすると作者は、銀狼の擬人的表現を避けることで、「ジョーズ」のサメみたいな迫力を出そうとしたのかな・・・。
子どもの頃に読んだ本て、すごく印象に残っているものだけれど、本書を読んでいる間、ずっと頭から離れなかったのが「シートン動物記」。
狼王ロボだっけ?似てる・・・よね。

(集英社 2010年6月30日発行 1400円+税)

「ウソの歴史博物館」 アレックス・バーザ2010年07月09日 01時30分

読みかけて中断していた本。
私の好きな雑学系だし、内容も歴史上のウソ、ペテン、ホラなので興味はあったはず。何で中断してたかって言うと、表紙が悪い。
有名な、ビルに突っ込む旅客機に気がつかずに撮った記念写真が額縁に入っている表紙。何となく、この手の悪ふざけが一杯載ってるのかと思って読み始めたら、マジメな歴史的記述が続いたので放り出しちゃったんだね。
今回読んでみたら、おもしろかった。
中世におけるホラ話の位置づけから、西洋のホラ話文化?の伝統に話は及ぶ。そういう歴史を踏まえないと、新聞に平気でホラ話を掲載しちゃう神経は理解できない。
元々は著者の運営するブログからできた本なので、一つ一つのエピソードの記述は割とあっさりしてる。それでもツボは押さえてるので楽しめます。
あ、個人的には昔から不思議に思っていた巨大猫を抱いている写真のナゾ解きが読めて、スッキリしました。

(文春文庫 2006年7月10日発行 657円+税)

「おれのおばさん」 佐川 光晴2010年07月09日 07時16分

父が会社の金に手を付けて愛人に貢いだことが発覚し逮捕。
主人公は、せっかく入った名門中学は退学し、家を売って北海道に住む伯母が経営する児童養護施設に暮らすことになる。

全然暗くない。
いろんな人がいて、いろんな事が起こり、みんなこうやって生きていくんだなあ、って納得。中学3年の主人公の視点で語られているが、中学生らしい揺れもなければ思いこみも無い。どっちかって言うと三人称の記述に近い。
ワタクシ的に嬉しいのは根っからの悪人は出てこないし、取り返しのつかない悲劇も起こらないこと。それから、人は変われるってこと。
中学生が変わるのは当たり前だけれど、大人も変われるんだって思わせてくれるんだ。それぞれの環境や出来事に応じて。

全体に淡々とした描写の中に、しっかりと読み応えのあるストーリーが展開されていきます。
養護施設の子どもたちは高校に進学しなければ退所しなければならない、とか豚の解体場面とか、ずいぶん調べたんだろうなあ。
おすすめです。

(集英社 2010年6月10日発行 1200円+税)
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