「鋼の錬金術師」 荒川 弘2011年03月10日

マンガです。

今回、27巻で完結しました。
「月刊少年ガンガン」という、決して対象年齢層の高くない媒体に連載されていたのが信じられないほど、内容はシビアです。
結構、残酷っぽい描写もあるし、救いの無い部分もある。
でも、他の凡百のマンガと違うのは、自分の力で頑張るってことだと思う。「錬金術」という超能力が使える、っていう設定はあるけど、能力アップが天から降ってくる訳ではなく、制約もあり、しかも最後にはその能力も・・・。

構造としては、ハードボイルドなんだよね。自分の価値観を守る痩せ我慢と、他者への思いやり。

ウケを狙うマンガばかりの世の中、というより出版社の意向でストーリーが定まっていく世の中で、大物でもない作者(失礼!)が自分の書きたい物語を書くことでパワーのある作品になった、という希有な例ではないかと思います。一昔前の少女マンガのパワーを思い出します。

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「日本SF精神史」 長山 靖生2011年03月13日

名著である。
なんたって、日本SF大賞と星雲賞のダブル受賞である。

「精神史」という題名からは、一瞬、なにやら胡散臭いモノを感じてしまったが、読んでみると全然そんなことはない。極めて真面目に日本のSFの流れを追ったものである。
幕末から明治にかけての創作や翻訳、それらは架空の旅行記や未来旅行記の形になっているものが多かった。当時は、「物語」というのは、主張したいことを語る手段だったんだろうと思う。それにしても、明治の初期から外国の出版物を、比較的間を置かずに翻訳しているパワーには感心する。

SFは、他の小説と較べると、時代を超越しているというか、時代背景と関係なく読めてしまうところがある。しかし、当然ながら、それぞれの作品は、その時代の精神を反映している。
本書は、時代順に個々の作品を紹介すると共に、それらの作品に現れている、その時代の精神を整理して示してくれる。
科学技術へのあこがれと、あるべき日本の姿を描く明治期。探偵小説への接近と、軍事小説へ傾斜していく戦前戦中期。科学による復興と娯楽小説指向が高まる戦後。

SFファンには、SFを読むようなハラハラドキドキのひとときを提供してくれる。SFファン以外の人には・・・新しい事を知る知的興奮が好きな人にはお勧めである。

(河出書房新社 2009年12月30日発行 1200円+税) アマゾンへのリンク
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