「現代落語の基礎知識」 広瀬 和生2011年06月25日 00時00分

先日、職場の飲み会で妙に狭い居酒屋に行ってしまい、思わず 「十姉妹じゃないんだからサ、そんなに狭いところに並ばなくても」 と言ったら、若い人にきょとんとされてしまった。
そう言えば、日常会話で「まんじゅう怖い」とか「ひとつ、ふたつ・・・今、なんどきだい?」とか言っても、まず通じない。
今の若い人が間違いなく知ってる落語は「じゅげむ」くらいらしい。会話って単語の意味さえ分かれば通じるものではなく、共通の基盤を必要とするんだなあって、しみじみ思うのであります。

と云う訳で本書です。
前半は、落語に関連する言葉をネタに著者の落語に関する思いを語っている。
後半は、1960年生まれの著者が、現在に至るまでの落語体験にからめて、落語の変遷を示す。

これらは、表題に反して、知識を伝えるものではありません。言葉の説明を通して、著者の落語感を述べています。それは一言で言って、「落語は落語家が語るものだ」ということです。
当たり前と言えば当たり前のことですが、落語が古典芸能として、古典をいかに再現するか、となってしまっては死んでしまう、と著者は主張します。「昭和の名人」は自分の芸を創ったから名人なのであって、古典を継承したからではない。

本書を読んでいると、立川談志の凄さ、というものを感じます。
伝統を壊すのではなくて、新しい伝統を創る、という壮絶な生き方を貫くことの凄さです。

改めて落語が聞きたくなる本です。

(集英社 2010年10月10日発行 1100円+税)アマゾンへのリンク
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