「フランス革命 歴史における劇薬」 遅塚 忠躬2010年12月16日 23時39分

最近、まじめな本が多いな・・・。

表題の通り、歴史の本です。著者の遅塚忠躬先生は、フランス革命史の第一人者と言って良い人で、惜しくも先月、お亡くなりになりました。

フランス革命には、人権宣言に見られるような理想主義的な面と、反対派の粛清に見られるような恐怖政治としての面があります。
これを、理想主義から始まった革命が、途中から暴走して恐怖政治に至った、とする見方があります。それに対して、著者は、フランス革命を一つのブロックとして捉え、その栄光と暗黒面は不可分であると見ます。
革命の原動力である民衆と、自由主義貴族の間で、新興ブルジョワジーが、どちらの勢力に接近するかで革命の方向が決まっていく。著者は、革命の二つの面は、その時々の情勢によりブルジョワジーがどちらに動いたかというダイナミックな過程の顕れとして理解します。薬の効果と副作用は、分けて考えることはできない、という訳です。

ジュニア新書でありますが、手を抜かずに、事実を積み上げて丁寧に論証していきます。私の職場の先輩も、「この本を読んで、始めてフランス革命がわかった」と言っていました。
名著、と言って良いのではないかと思います。

(岩波ジュニア新書 1997年12月22日発行 780円+税)アマゾンへのリンク
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