「終わらざる夏」(上)(下) 浅田 次郎2010年08月12日 05時49分

終わらない夏上下の表紙
北海道のはるか北、千島列島の北端、カムチャツカ半島と向き合うように占守(しゅむしゅ)島はある。第二次世界大戦末期、この極寒の地に日本軍最強の部隊がいた。そして、昭和20年8月18日未明、ソ連軍が占守島に上陸した・・・。

45歳で召集された翻訳家の片岡、4度目の軍役となる郷土の英雄「鬼熊」軍曹、集団疎開先から脱走した譲と静代。一人一人の運命を丁寧にたどりながら、物語は最後の悲劇へと進んで行きます。

上下2巻を読み終わってまず頭に浮かんだのは「これって史実なんかしら?」という思いでした。
占守島の戦いは史実でした。あの8月15日の後に、北の果ての島で壮絶な戦いが行われたのです。

ここに、「日本人はなぜ終戦の日付をまちがえたのか」という本があります。元駐チリ大使の色摩力夫氏の著書です。氏によると、8月14日にポツダム宣言の受諾を連合国側に申し入れ、15日に国民に伝えただけでは降伏したことにはならず、国際法上は9月2日のミズーリ号上での署名をもって降伏が成立したことになります。従って「9月2日までは、ソ連の軍事行動は不当でも不法でもない。」そうです。ですから、侵略に対し抵抗をしなかった北方領土については、国際社会は日本の主張に理解を示さないと記述しておられます。

しかし、しかし、北方領土からさらに離れた北の外れで、日本軍は必死の抵抗をしたのです。これは攻撃に対する単なる自衛なのか、それとも領土の防衛なのか・・・。
ともかく、
国際法は知らないが、9月2日以前だって降伏の交渉中なんだから、攻撃するのはズルいと思うぞ。>ソ連

8月のこの時期に、我々の父祖の生と死に思いを馳せながらじっくり取り組むのに好適な著。

(集英社 2010年7月10日発行 上下各1700円+税)
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